口蹄疫の続き

昨日は口蹄疫の対策ででいろんな動きがありました。
さて、今回は私が気になった問題点をいくつか。

・埋める場所がないc0166720_10305833.jpg
現在、感染を封じ込められない原因の一つがこれです。
口蹄疫に感染した動物はウイルスを排泄して新たな感染源になることから、急いで殺処分を行い、土に生めるか焼却します。 感染した動物やその死体を遠くまで運ぶことは現実的ではないため、普通は手近なところで土に埋めます。 しかし、畜産農家のすべてが埋設処理に十分な広い敷地を持っているわけではなく、むしろ狭い敷地内にウシやブタをぎっしりと飼っているところがたくさんあります。 こうなると他で土地を探すことになりますが、動物の死体を大量に埋めるのに「どうぞお使い下さい」と言う人はいないでしょう。 公有地も近くになければ埋設場所探しに時間がかかります。 場所が見つかるまで感染した家畜は生かされています。 殺してしまうと腐って処理が大変になるので、殺す直前までそのままです。その間ずっとウイルスを出し続けて、空気感染で病気を広げる可能性があります。

・予防的殺処分
理想を言えば、感染地域のウシやブタを感染の有無に関わらず全部殺処分して埋めてしまうのが最も効果的です。 地域に牛や豚がいなくなれば、感染は自然と収まるはずです。
とても残酷な方法ですが、感染が広がってしまったら結局はもっと多くの家畜を殺すことになります。 しかし、死体を埋める場所を今よりももっとたくさん確保して、処理に当たる人も大量に必要になるので、すぐに実行するのは難しいでしょう。 また、現在の法律では感染がはっきりしない動物を強制処分することは難しく、強く指導することになります。

・ワクチンの使用
今回の感染でワクチンの使用の是非が話題になっています。 ワクチンを使えば、殺処分する家畜の数を当面は減らすことが出来ます。 ただし、ワクチンを使うと“清浄”であるとはみなされなくなります。 “清浄”を回復するには感染が完全に終息し、なおかつワクチンを接種した動物が全部殺処分された後になります。
しかし、ワクチンを予防的殺処分の代わりに使おうとしています。 現状では予防的殺処分が出来ないので、ワクチンを使って感染が広がることを防ごうという考えです。 ただし、ワクチンを使った家畜の肉やミルクは出荷できないので、ワクチンを注射した時点で家畜としての価値を失います。 結局は後から殺処分することになりますが、感染した家畜の処分とタイミングをずらすことができます。 予防的殺処分よりは現実的な方法ですが、農家が家畜を失うことには違いはありません。 今回は、その周囲のまだ感染が出ていない地域の家畜も全部殺処分する方針が出ています。 こちらは、肉として処理した後、安全が確認できたら出荷するそうです。

・清浄性の維持
ところで、清浄性を維持することにどんな意義があるのでしょうか。 もちろん、清浄性を維持しておけば新たな感染を簡単に発見できます。 それ以外に経済的にも大きな意味があります。 清浄国は汚染国からの牛肉や豚肉の輸入を認めません。 これは、日本が汚染国になることで、海外で人気の高い和牛の霜降り肉の輸出が出来なくなります。 逆に、今まで汚染国であることを理由に制限してきた外国からの牛肉や豚肉の輸入を迫られることにもなります。 海外との競争を考えれば、清浄国であることは大きなメリットです。

・人には感染しない?
口蹄疫の人への影響については、多くの新聞に「人には感染しない」と書かれています。 しかし、厳密にはこれは少し問題があります。 “感染”という言葉の定義の話になってしまいますが、WHOは口蹄疫を人獣共通感染症としています。 つまり、広い意味では口蹄疫ウイルスは人に感染することがあります。 ただし、症状は比較的軽いため、ほとんど問題になることはありません。 そのため、ウイルスにより人に危害が及ぶことを“感染”と定義すると、「人には感染しない」ことになります。 いずれにしても、人には直接的な影響はありませんので、風評被害の加害者にならないように注意しましょう。 しかし、人がウイルスを運ぶキャリアとなる可能性があります。 感染地域にむやみに近づくことは避けて下さい。

・補償
強制的にウシやブタを処分するにあたって、これを補償するために税金が使われます。 畜産農家は突如財産を失うので、補償がなければこれからの生活がなりたちません。 実際には、補償があっても畜産業を今後も続けることは容易ではありません。 また、補償がなければ多くの人が困るだけでなく、感染した動物を隠そうとする人が出てくるかもしれません。 そうなると、口蹄疫の撲滅がさらに難しくなります。。

母牛
今回の一連の感染が終息した後は、畜産農家の再建が始まります。 この時、一番大変なのが母牛や母豚の確保になります。 県外から購入すれば数をそろえることは可能でしょう。 しかし、以前と同じ質を保つことは簡単ではありません。 母牛や母豚の数と質を回復するのには何年もかかるでしょう。 また、もともと牛や豚を売っていた県が買う側に回ることで、一時的に家畜の品不足になります。 これは、当然肉の値段にも影響します。

種牛
今回の被害で深刻なのは種畜場でも感染が確認されたことです。 牛の品質は遺伝によるところが大きいので、種牛を失うことは大問題です。 県内の牛の品質を維持するのに最も大事な種牛が失われたら、回復には何十年もかかるかもしれません。 おそらく、これも他県から新たな種牛を導入することになりますが、他県にとっても優秀な種牛は畜産品のブランド力を高めるために必要です。 そのため、どれぐらい優秀な種牛が集まるのかは未知数です。

by KY
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by seimei-eiyou | 2010-05-20 08:54 | サイエンス | Comments(0)