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生命と栄養のブログ from 福山大学 生命栄養科学科

ポールソン米財務長官と三笠フーズ

アメリカのポールソン財務長官は7日記者会見し、経営難に陥っている連邦住宅抵当公社と連邦住宅貸付抵当公社、いわゆるファニーメイとフレディマックを政府の管理下におき、約2000億ドルの公的資金を注入するという救済策を発表しました(おい、おい、いきなり経済の話かよ!)。 

これはただ経営難に陥った公社を政府が救うというものではなく、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題から不安定化している金融システム全体の安定化を図るための思い切った措置です。 この発表を受けて、世界の株式市場は値上がりし、世界的な景気後退懸念で値下がりしていたドルなどの主要通貨が買われ、相対的に円は下げました。(食と栄養に何の関係があるんだ?)。 

現在世界のGDPの総額は約60兆ドル、金融の証券市場は約180兆ドルに相当すると見積もられています。 つまり実体のない虚構経済の規模が、実物の売買の市場規模(実体経済)の3倍もあるということります(なんか、難しいぞ!)。

皆さんのお財布に入っている紙幣は、日本国政府がその価値を保証してくれなければ、ただの紙切れにすぎません。 つまり紙幣や証券が市場を流通できるのは、日本やアメリカのような国家がその価値を保証し、市場に信用が形成されているからです(いったいどうやって、話を食と健康に持ち込むんだ?)。

サブプライムローン問題とは簡単に言うと次のようなものです。 まず信用力の低い、つまり焦げ付き(貸したお金が返済されない)リスクの高い住宅ローンなどが証券化され、世界中の金融商品に組み込まれました(つまり、危ない金融商品をリスクの少ない優良な金融商品と混ぜて薄めた)。 それが昨年の夏ごろから、サブプライムローンの返済延滞(つまり貸し倒れ)が徐々に増え、これを組み込んだ金融商品全体が劣化し始めました。 サブプライムローンは金額も大きく、金融商品への組み込みも複雑なため、いったい誰がどれぐらいの損失を抱えているのかわからなくなり、市場の信用が失われました(もう、食と栄養には戻れない?)。 

上で述べましたように、金融経済は信用でなり立っているので、信用がなくなれば金融システムが崩壊します。 今回の措置は、アメリカ政府が信用を与える(与信)ことにより市場に安定と安心をもたらし、自由主義経済を救うための手を打った事になります。 以上のお話はある意味、大阪の三笠フーズが、食用に適さない事故米を食用目的に不正転売していたという事件と共通点があるように思われます(おっ! 食の安全?)。

三笠フーズと取引がある食品会社は、どれぐらいの事故米を仕入れたのか、事故米がどの商品にどれぐらい混入しているのか、またそれはどれぐらい危険なのかがわからずに信用が失墜し、商品が市場で流通できなくなっています(ニュースを見ると、実際に商品の回収が始まっているようです)。 昨日まで、「これは金だ。」といってみんなが信じていたものが、誰かが「これは真鍮かも知れない。」、「粘土かも知れない。」といい出して不安が広がると、信用が失われ、システムが崩壊します。

サブプライムローンの広がりに比べると、三笠フーズ事件の広がりは限定的でしょう。 しかし農水省の事故米の管理に不安が及ぶと、せっかく上向いてきた米の消費に水を差しかねません。 また今回巻き添えを食った会社の中には経営が苦しくなったり、場合によっては倒産したりするところも出てくるかもしれません(三笠フーズでは社員に解雇通知が出されたらしい)。 

食べ物に関しては、一度不安が芽生えると信用の回復は容易でなく、金融における政府与信のような手段も限られています。  国が与信して、国民に安全と安心をもたらす(?)はずの消費者庁の設置も、政府・与党が8月にまとめた1兆8千億円という割とコンパクトな総合経済対策も、福田首相の辞任により今後どうなるか。 日本相撲協会の今後も含めて、予断を許しません。 

以上、ポールソン財務長官から三笠フーズへと続くお話でした。 生命栄養科学科では食料経済学を担当していますので、勉強もかねて。  by iwa

ポールソン米財務長官と三笠フーズ_c0166720_9462623.jpg
(上の写真は、4階廊下の壁に貼られている料理の写真です。 本文章とは何の関係もありません。)
by seimei-eiyou | 2008-09-10 09:26 | その他