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生命と栄養のブログ from 福山大学 生命栄養科学科

良い菌、悪い菌

1週間ほどブログの更新が滞ってしまいましたので、この間の事を少しずつご紹介しようと思います。

今回は、2月23日(月)に行われました修士論文発表会を聞いて、です。

今年の大学院生命工学専攻では、24名の方が卒業研究の成果を発表されました。 内容は遺伝子、ゲノムから植物、シロアリ、魚、海藻、環境汚染まで多岐にわたります。

いずれも興味深いご発表で、生命工学部では色々な人が色々な研究をしている事がよくわかります。

c0166720_14205912.gifその中の一つ、海洋生物科学科の河原先生の研究室からのご発表で、魚を養殖する時に、プロバイオティクス効果のある乳酸菌を添加剤としてエサに混ぜると、免疫賦活効果があるというご発表がありました。

乳酸菌によるプロバイオティクス効果については、ヒトの食事の方が本家本元ですね。 それが魚についても言えるということでしょう。 

ちなみに、プロバイオティクス効果とは、「体によい生きたビフィズス菌を食べると、整腸効果が期待できる」などのことで、皆さんもよくご存知だと思います。

では無害あるいは悪い細菌と、体によい細菌をどこで区別ししたらよいのでしょうか? これについては、あまりよくわかっていないというのが現状のようです。

これに関して、昨年のNatureに興味深い論文がありました。

カリフォルニア工科大学からの”A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease” (S.K. Mazmanian et al., Vol. 453, Issue no. 7195, 29 May 2008)です。日本語にすると、「微生物の共生因子は炎症性腸疾患を防ぐ」というものです。

炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎、クローン病を代表とする腸の病気で、慢性的に原因不明の炎症が発生し、長期にわたる下痢や血便、腹痛などの重篤な健康被害をおこします。

c0166720_1422873.jpg腸内細菌の一種であるBacteroides fragilisは、ほ乳類の免疫系に大きな影響を与え、(細かいしくみは省略しますが)大腸炎を防ぐ働きがあります。

つまりこの細菌は、腸の炎症反応を抑制する事によって、この菌を腸内にもつ動物にとって良い菌になっているわけです。

ではこの菌の何にこのような効果があるのでしょうか?

どうやら莢膜に存在するpolysaccharide(つまり多糖ですね)という共生因子によるものであることがわかってきました(ここからもそう遠くない広島大学の田辺創一先生も、同じようなご研究をされています)。

菌によって持っているpolysaccharideの種類が違いますので、そこが良い菌かどうかの分かれ目?

この研究を発展させると、体によい微生物の共生因子が、将来病気の予防や治療に応用できるかもしれません。

このように動物(もちろんヒトも)と、体の中に住みついている常在菌は、化学物質を通じてお互いに助け合っているという姿が浮かび上がってきます。 by iwc

c0166720_14225223.jpg
PS 最初の魚のエサに乳酸菌を混ぜるというお話に戻りますと、こちらでも菌体成分としてはlipopolysaccharide(リポ多糖)が効いているようです。
by seimei-eiyou | 2009-02-28 14:32 | その他