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生命と栄養のブログ from 福山大学 生命栄養科学科

FTO遺伝子

前回の“Eat it”に続き、今回はNatureの記事から、肥満に関連する遺伝子を紹介しましょう。 [Nature 458, 797-938 16 April 2009 no.7240]

現在はゲノム解析技術が進み、超高速で塩基配列の解析ができる次世代シーケンサーも国内に数十台配置されています。 これらの技術と機器を駆使して、生活習慣病などに関連する遺伝子が多数見つかっています。 その中で今回紹介するのは、BMI(ボディーマスインデックス)と強い相関関係が認められるヒトFTO(太!)遺伝子の多型です。

このFTO遺伝子が肥満型になっている人は、非肥満型の人と比べてBMIが高くなる(肥満になる)というものです。 まあ要するに、FTO遺伝子の多型(個人差)により、肥満になりやすかったり、やせ形になりやすかったりするわけです。 そこで問題は、このFTO遺伝子はどんな働きをしているかです。

遺伝子の働きを解明しようとすると、標的遺伝子を欠損した(無くなった)生物体をつくり、どうなるかを観察します。 さすがにヒトで実験する訳にはいきませんので、ハインリヒ・ハイネ大学の研究者は、Fto遺伝子を欠損したマウスで実験を行いました。

c0166720_17354445.jpgその結果、Fto遺伝子が欠損したマウスでは生後の発育遅延、並びに脂肪組織や除脂肪体重の大幅な減少が認められました。 Ftoマウスが痩せるのはエネルギー消費と全身性交感神経活動が活発になるためで、要するにエネルギーを成長ではなく無駄な事に使ってしまうためなようです。 つまりこのFTO/Fto遺伝子は、エネルギーを無駄使いしないように、エネルギー消費を調節している大切な遺伝子みたいです。 

生物で太るというリスクを感じているのは人間ぐらいでしょう。 それ以外の生物は、常に飢えからどう逃れるか、エネルギーを大切に使うかを考えています。 つまりFTO/Fto遺伝子は「太っちょ」になってしまうお邪魔遺伝子などではなく、エネルギーを節約する大切な役割を担っているわけです。 これを肥満関連遺伝子と糾弾するのは、人間の身勝手な振る舞いですね。 

それにしても、人間というのは道に外れた生物ではないかと思ったりします。
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by seimei-eiyou | 2009-07-01 17:38 | サイエンス