2009年 11月 16日
遺伝子が先か 環境が先か
一応、「ニワトリが先か たまごが先か」をもじったつもりなのですが、「ちっとももじれてない!」、「意味わかんない!」と言われても、返す言葉がありません。
さて、先日の山中伸弥先生の記事でも少し触れましたが、人間が健康でいられたり、あるいは病気にかかったりする原因には、遺伝的な要因や環境的な要因があります。 この中で遺伝的な要因については、病気に関与する遺伝子などが多数突き止められています。
一方環境因子についてもすいぶん研究されており、大気や水、土壌などの環境汚染と人体への影響について多くの研究があります。 これらの研究を通じて、遺伝と環境の境界に位置し、健康や病気と大きく関わっている分野の存在が明らかになってきました。 その分野とはエピゲノムです。
エピゲノムとは、環境的な要因によって遺伝子の発現が制御される現象です。 遺伝子DNAの特定の塩基がメチル化(メチル基[-CH3]の付加)されたり、DNAの糸巻きの核となる蛋白質であるヒストンがアセチル化(アセチル基[CH3CO-]の付加)される事により、遺伝子の発現が抑制されたり、促進されたりします。
さて、ここで出てくる環境的な要因とは何でしょう。 色々ありますが一番大きいのは食生活や生活習慣だと考えられます。 つまり食べ物や生活習慣によって、遺伝子配列は変化しないものの、遺伝子やヒストンに変な物が付加する事により、いつも動いている遺伝子が動かなくなったり、思っても見ない遺伝子が動き出したりして健康に影響を与えます。
東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井寿郎教授がマウスを使って研究したところ、肥満や生活習慣病が個別の遺伝子の異常ではなく、エピゲノムの異常によって発症しうることが明らかになりました。 この詳しいメカニズムは省略します。 ご興味の方はこちらをご覧下さい(そんなに詳しくないけど)。
今後、エピゲノムの異常がどのような環境要因で引き起こされるのか明らかにすることができれば、肥満や生活習慣病を予防するライスタイルが提案できるとともに、肥満や生活習慣病を招くエピゲノムを抑える医薬品の開発が期待できそうです。