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生命と栄養のブログ from 福山大学 生命栄養科学科

口蹄疫(堅い話です)

口蹄疫(堅い話です)_c0166720_1117188.jpg前のブログで予告されていた口蹄疫(こうていえき)について。

宮崎県で、日本では10年ぶりとなる口蹄疫が発生しました。この病気は、ウシやブタの四肢の末端(蹄、ひづめ)や口の周囲の水疱性の発疹を主な症状とします。これらの症状はヒトの“手足口病”に似ていて、原因となるウイルスも、共にピコルナウイルス科に属しています。ただし、両者は全く別の病気なのでご注意下さい。
口蹄疫は古くからあった病気で、日本でも100年以上前に流行していました。この病気は、ヒトの“手足口病”と同じように症状は比較的軽く、牛疫や狂牛病のような高い致死性はありません。しかし、感染力が非常に強く、空気感染で広い範囲にウイルスが広がります。記録によると、イギリスからドーバー海峡を越えてフランスまで感染が広がったこともあるそうです。症状は軽くても多くの動物に感染すれば被害は大きくなることから、口蹄疫を撲滅する努力が続けられてきました。日本を含むいくつかの国では、感染した動物を淘汰(殺処分)することで地域の清浄性(病気が存在しないこと)を維持しています。ワクチンは、発病を抑える効果がありますが、ウイルスを撲滅することは出来ません。このあたりの事情は鳥インフルエンザに似ています。
日本では100年ほど前に口蹄疫を撲滅した後は、92年間も清浄国であり続けました。そのため、私が学生の頃は、口蹄疫を直接知っている獣医師はほとんどいませんでした。ところが2000年に宮崎県で口蹄疫が発生しました。海外からワラを輸入した時に一緒にウイルスもやってきたと考えられています。感染症のグローバル化を象徴するような出来事でした。そして、現在も韓国や中国では口蹄疫が流行しているので、日本への侵入が警戒されていた最中に今回の事件です。
2000年の口蹄疫の発生は、92年ぶりのものでしたが、たった3ヶ月程度の短期間に感染を押さえ込むことに成功しました。しかし、今回は発生が公表されてから1ヶ月が経ちますが、終息の様子は全く見られません。同じ宮崎県で何が違っているのでしょうか。初動の立ち遅れが指摘されていますが、今回の口蹄疫の発生を検証した結果はいずれ公表されるでしょう。失敗から学ぶことは多いはずです。

続く

By KY
by seimei-eiyou | 2010-05-19 08:24 | サイエンス