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生命と栄養のブログ from 福山大学 生命栄養科学科

墨西哥(メキシコ)

この連休は新型インフルエンザの話題で持ちきりでした。 テレビで見る限り、空港ではマスクを付けずにはおれないような強迫観念があります。 せっかくの休暇を海外で過ごしたのに、帰りの飛行機で1人ひとり重装備の係官から機材で体温を測られ、問診票に記入するのはきっと気が滅入るでしょう。

さてそのウイルスは、どうやら弱毒型とされていて危機感がやや薄らいだ印象を受けますが、「いやいやそんな事はない、これから慎重に経過を観察し続けないとこの先大変な事になる!」ときっと菊田博士が警鐘を鳴らしてくれるでしょう。 

実際TVでメキシコでの状況を見ていると、とても弱毒型とは言えない恐ろしい症例がたくさんありました。 インフルエンザと言えば体力の落ちた高齢者がバタバタと倒れていくというイメージがありますが、若い方に感染者が多いのは気になります。

それにしても、なぜメキシコか? 

アメリカにくらべると衛生状態や栄養状態が悪いとはいえ、メキシコ以上に悪い国はたくさんあります。 メキシコという事にも何か秘密が隠されているのでしょうか。

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メキシコと言えば・・・何を思い浮かべますか? サボテンにテンガロンハット、ライフルを背負って馬に乗る盗賊団、西部劇の世界でしょうか(カリフォルニアとテキサスはもともとメキシコ領)。 これらに加え、メキシコには光と陰、明と闇、豊と貧、そして生と死が隣り合わせに存在しているようなところがあります。 生の終わりが死ではなく、生と死はコインの裏表のように2つ存在してはじめて生であるような。 そんなイメージがインフルエンザと重なります。

もう一つ、メキシコ料理を忘れるわけにはいきません。 日本、特に地方ではメキシコ料理になじみが薄く、何となくスパイシーで大雑把な料理のように思われていますが、穀類、豆類、野菜をふんだんに使い、油も控えめで健康的なレシピがメキシコ料理にはたくさんあります。 味はどうでしょう・・・、好みと慣れの問題だと思います。 スペイン語が聞こえるカフェテリアで食べていたtex mexが、懐かしい。 スペイン語は世界で最も響きの美しい言葉の一つだと思います。

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by seimei-eiyou | 2009-05-08 12:34 | その他

対策

栄養とは関係の無いインフルエンザの話題が続いてしまいすみません。最後に(たぶん)、もう一つだけ。

一昨日、私の家族が薬局でマスクを買おうとしたら、すでに売り切れでした。次の入荷も未定とのこと。インフルエンザ対策が個人レベルでも進んでいます。

政府や地方自治体は、この数年間、新型インフルエンザ対策を積極的に進めてきました。政府の今の対策は、あらかじめ決められていたマニュアルに沿って行われています。そのため、比較的落ち着いて対応しているように見えます。(厚生労働大臣以外は?)

海外からのウイルスの侵入阻止や全体の方針決定は国の仕事ですが、感染者に対する医療システムを構築したり、個人や地域コミュニティーでの対策を支えたりする実務は、地方自治体の仕事になります。これから先は、それぞれの自治体の手腕が試されます。

c0166720_952484.jpg現在、各自治体では“発熱相談センター”を設置して、疑いのある患者には指定の病院で受信するように指示しています。そして、日本に新型インフルエンザが侵入したことが判明した時点で、各自治体は“発熱外来”を設置して、風邪やインフルエンザの疑いのある人をすべてこちらに集めて診察を行います。こうすることで、新型インフルエンザを他の病気の人から隔離します。ところが、この“発熱外来”で問題が生じる可能性があります。新型インフルエンザ対策の進み方は自治体により差があるのに加えて、発熱外来に必要な施設と医師、看護師等を十分にそろえるのは簡単ではありません。また、以前より医療の地域格差が問題になっていました。そのため、すべての自治体が適切な数の“発熱外来”を設置できるかは微妙です。域内の風邪やインフルエンザの患者すべてに、ごく少数の“発熱外来”で対応できるのか、疑問視する人もいます。また、感染者を入院させる専用の病棟も僅かしかありません。新型インフルエンザに対応するのは病院の仕事ですが、同時に病院には体力の弱った人が入院していたり、受診に訪れたりします。十分な対策なしに、感染力の強いウイルスを持った人が病院に集まると深刻な事態に発展する可能性があります。
事態がさらに進んで、感染者がどんどん増えてくると隔離の意味が無くなります。そうなると、“発熱外来”や隔離入院は見直され、普通のインフルエンザと同じような対応になります。

c0166720_955669.jpg正直なところ新型インフルエンザがこんなに早く現れるとは思っていなかった、と言う人が、私を含めてたくさんいると思います。そのため、十分な準備ができていないところもたくさんあるでしょう。この先、学校の休校や事業所の休業、スポーツイベントや公演の中止など、今後様々な分野に新型インフルエンザの影響が出ます。新型インフルエンザ発生時の対応マニュアルをあらかじめ作成するようにと、国の「新型インフルエンザ対策ガイドライン」は求めていますが、一般企業などで完全なマニュアルを持っているところは少ないでしょう。その他にも、医療やライフラインの維持、食料や生活必需品の供給、社会的弱者の保護など、社会で対応しなければならない課題はたくさんあります。
今、我々が試されています。

By KY

追記:前のI先生の話にあるように、少々「生命栄養科学科」から離れた話ばかりですが、“今”必要なことを書きました。これからしばらくは、必要なことが起こらない限りこの硬い話題は避けるようにします。
ただ、最後に一つだけ。
「鳥インフルエンザ」や「ブタインフルエンザ」とは、本来は鳥やブタがインフルエンザウイルスに感染して起こる病気を意味します。そのため、ニュースで見られるような、鳥やブタに由来するウイルスの人への感染症に同じ言葉を使うことには強い抵抗があります。農林水産省の文章では、このような“誤用”はまず見かけないのですが、厚生労働省は盛んにこの言葉を使います。何とかならないものでしょうか。
I先生のように、どんな話題も最後は無理やりにでも食や栄養に結びつける力が無くてすみません。
by seimei-eiyou | 2009-05-02 09:19

flu

新型インフルエンザがえらい事になっています。 

本ブログでは、獣医師で医学博士でもある菊田博士が的確な情報を流して下さっており、記事が一挙にシリアスになっています。 一方、専門家でない私が書くと、どうしてもユルい記事になってしまいますが、その点お許し下さい。

菊田博士の記事にもありますように、現在でも世界中でおなじみ型のインフルエンザ(regular flu)が流行しており、新型とおなじみ型を一目で見分けるのは難しいようです。 そんな中CNNの記事を読んでいると、アメリカでは毎年36000人!がおなじみ型のインフルエンザで亡くなられており、今年も1月以来13000人が亡くなったそうです。 つまり毎週800人以上が亡くなったことになり、世界全体では年間25~50万人の方がおなじみ型のインフルエンザで命を落とされていると推定されます。 

こうした数を目の当たりにすると、おなじみ型のインフルエンザといえども人類にとって大変な脅威である事がわかります。 免疫があると言われているおなじみ型でさえこれですから、新型が流行するとどうなるか? 世界中で新型インフルエンザが注目される理由がここにあります。

おっと、菊田博士につられてシリアスな文章になってしまいました。 少し食方面に方向転換してみます。 

CNNの別の記事を見ると、「アメリカのブタ肉、養豚業界に深刻な風評被害(Inaccurate 'swine' flu label hurts industry, pork producers say)」という記事が出ています。 

アメリカのマスコミでは新型インフルエンザを“swine flu”と表現しています。 ”swine”とはブタの事です。 アメリカの養豚農家や豚肉加工業界は、「新型インフルエンザがブタインフルエンザと誤表記(misnomer)されたため、豚肉が感染源だと誤解されて大きな風評被害を受けている。」と訴えています。 実際、アメリカの養豚・加工業界を取り巻く環境がもともと厳しいところに、今回の騒ぎでさらに打撃を受けているようです。

一方日本では、狂牛病(BSE)騒ぎでアメリカ産牛肉が入ってこなくなった時、吉野家さんは豚丼で乗り切りました。 豚肉はインフルエンザの感染源ではありませんが、牛肉はBSEが怖い、豚・鶏肉はインフルエンザが怖い、羊は肉骨粉の原料でBSEの原因になった、鯨はもともと捕れないなんてことになると、食べるお肉がありません。 もっとも肉の量を減らして野菜中心の食生活にすれば健康にいいし、食糧資源の有効利用にとっては好ましい事かもしれません。
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by seimei-eiyou | 2009-05-01 21:07 | その他

シナリオ

また、インフルエンザの話です。
今回の新型インフルエンザは今後どのように推移するのでしょうか。実際には不確実な部分が多く、正確な予測は無理なのですが、政府が示しているガイドラインを基にあえて今後のシナリオを考えてみます。

現在、新型インフルエンザは、最初の発生地であるメキシコで感染が広がっているのに加えて、人の移動に伴って世界中にウイルスが運ばれつつあると考えられています。日本では水際対策を取っていますが、完全に侵入を防ぐことはできないので、早晩感染者が出るでしょう。などと書いていたら、日本でも疑い患者が出ました。これらは、最近アメリカやカナダに行った人が簡易検査(病院などで行っている鼻に綿棒押し込んで試料を取る免疫クロマト法)で陽性を示したもので、ブタインフルエンザかどうかはウイルスの遺伝子を調べないと分かりません。前にも書いたように、この時期はまだ通常のインフルエンザの流行が終息していません。もしブタインフルエンザであっても、封じ込めに成功すれば問題ありません。ただ、いつかは必ず日本でも感染が広がります。それが今回なのか、もっと先なのかは分かりませんが。

ブタウイルスが通常のインフルエンザと同じ程度の感染力を持っているとすると、封じ込め対策をすり抜けた場合、数週間のうちに日本中に流行が広がります。まったく新しい型のインフルエンザは免疫を持つ人がほとんどいないことから、急激に感染が広がると予想されています。政府は、感染者の総数を全人口の約25%程度(約3,200万人)と見積もっています。この内の40~80%の人が医療機関で受診し、ウイルスの病原性の強さによりますが、数十万人から最大で二百万人が入院すると予想されます。死亡者数も病原性によって大きく異なりますが、普通のインフルエンザと同じ程度であれば2~3万人程度、高病原型だと感染者の2%、64万人が死亡します。このような状況が短期間に集中して発生すると、社会的混乱が大きく、ライフラインの維持もできなくなったり、最悪の場合は医療体制が持ちこたえられない可能性があります。そのため、可能な限りの対策を取って、感染者数を減らし、さらに感染のピークを遅らせたり、分散させたりすることが必要です。

通常のインフルエンザにはワクチンがありますが、新型に対応したものを一から作るとなると、ワクチンの効果と安全性を確認するまでに早くて数ヶ月、そこから大量生産にかかり、ワクチンが行き渡るようになるにはさらに数ヶ月が必要です。運良く、過去に開発したワクチンで効果の高いものが見つかれば別ですが、少なくとも流行の前半はワクチンを期待できません。

このような流行がどのぐらいの期間続くのでしょうか。これも不確定要素が多いのですが、おそらく最初の感染のピークが2ヶ月ぐらい続いた後、小康状態となり、さらに二度目、三度目の感染のピークが現れると予想されています。そのため、流行が完全に収束に向かうのに1年以上かかるかもしれません。特に、二度目、三度目の感染のピークでウイルスが変異(形が変わる)していると、最初の感染で獲得した免疫が効かず、再度感染してしまう可能性があります。

今回の流行の原因ウイルスの性質はまだ十分に明らかになっていませんが、メキシコ以外の地域での感染者の様子から、病原性の低い弱毒株ではないかと予想している人もいます。ただ、弱毒株といっても、感染者が増えるとそれだけ死亡する人が増え、日本だけでも数万人の人が死ぬかもしれません。また、流行の途中で病原性が変化して、強毒型が出現する可能性もあります。

今後のシナリオを最も楽観的に予想すると、インフルエンザの流行が下火になる夏を迎えて、今回のウイルスの毒性が弱いため感染が思っていたほど拡大しないかもしれません。もしかしたら、はじめは小規模の流行だったのに、冬になって急に感染が拡大し始めるのかもしれません。それとも、最初から大規模な流行を引き起こし、変異を繰り返すことで、長期にわたって我々を苦しめ続けるのでしょうか。

c0166720_8185853.jpg今後の流行について正確に言い当てることは専門家でも難しいでしょう。適当なことを言って、後付けで「だから私の言ったことは正しかった」とすることはできますが、こんなことは誰も求めていません。今必要なのは“予言”ではなく、着実な対策の遂行です。


By KY
by seimei-eiyou | 2009-05-01 08:19